International Migrants Day

外国人労働者の実態と問題点 1/2

首都圏移住労働者ユニオン書記長、本多 ミヨ子さんがお書きになった『外国人労働者の実態と問題点』を回を分けてご紹介します。

はじめに

日本に暮らす外国人は2017年末現在約256万人、そのうち「外国人雇用状況届(厚生労働省発表・2017年10月現在)」のまとめでは、労働者は127万4000人となっている。しかしこの統計には特別永住者が含まれていないことと、すべての事業主が提出しているわけではない(例えば法務省発表・在留外国人統計の技能実習生は27万4000人だが、雇用状況届は25万7700人となっている)こと等を考えると、実際はさらに多くの外国人労働者が働いていることになる。

首都圏移住労働者ユニオン、 LUM(ラム)にはさまざまな労働相談が寄せられるが、組合までたどりつく労働者はごく一部であると考えられることから、実際には相談件数の何十倍もの権利侵害が発生していると推測される。とはいえLUMへの相談からだけでも多くの問題が浮かび上がってくる。それらを類型的に示しながら、問題点を考えてみたい。

実態および問題点

1.契約書がない─労働条件はすべて口頭で伝えられる

このケースは大変多い。相談に来る労働者の6割から7 割は契約書がない。口頭で給料は「1時間○○円」(工場労働者&一般飲食関係&語学教師等)とか「1日○○円」(建設労働者等)とか「1ヵ月○万円」(インドレストランのコック)と言われるだけ。労働時間については初日に「○時に来て」と言われ、退社は「今日はこれで帰っていい」と言われるまで働き、これが固定化するというケースが多い。残業割増、有給休暇などその他の労働条件は何も言われないから、何もないと思ってしまう。

LUMへの相談で一番多いのはインドレストランのコックさんだが必ずこのパターンで、賃金は1ヵ月6万円~13万円、労働時間は9時~23時(休憩2時間)がほとんどである。完全な最賃割れであり、本人の申立てによって残業手当を計算しオーナーに要求することになる。

2.契約書があっても守られない─契約書は入管提出用?

契約書があっても必要事項が定められていなかったり、欠勤や遅刻の減額が異常に多かったり、家賃等控除分の取り決めがないなど、不十分なものが多い。また「この契約書は入管提出用で本当の金額は本人に口頭で伝えてある」などと開き直る社長も少なくない。団交では「契約書どおり払え」と詰めるが決裂して労働審判になると「契約は個々に決めることが出来るし、本人が納得すれば引き下げもできるわけだから会社の言うことも一理ある」などという審判員もいて、「いや本人は納得していない」と、組合側弁護士ともども頑張ることになる。

2人の技術労働者(バングラデシュ人とインド人)のケースでは、契約書には「月23万円」と書かれていたのに初めから守られなかった。社長は「時給1000円で本人も納得している」と言い張ったが、2人は最初の月から「契約書どおり払ってほしい」と言い続けたのに社長が「その話はまた今度」などとはぐらかしていたことが証明でき、社長はしぶしぶ全額払わざるを得なかった。このケースでは2人とも日本語が堪能だったため契約書の内容を理解していたが、日本語だけで書かれた契約書に内容もよくわからずにサインしてしまうこともある。

3.長時間労働─労働時間の管理がされていない

長時間労働が多い。しかしタイムカード等で時間管理がされているケースは少なく、長時間労働の証明が難しい場合がある。団体交渉で社長やオーナーが「いやそんなに働いていない」と主張するケースは多く、会社側・組合側ともに証拠はないため、「労働時間管理は会社の責任なんだからそれをしていないのは会社の落ち度だ。こちらのいうとおり支払え」とやりあうことになるが、そのまま支払う会社はほとんどなく、和解策をさぐることになってしまう。組合員には「今後は必ず自分で出退勤時間を記録しておくこと」「このことは友達にも伝えるように」と話すことにしている。

4.賃金未払い、各種手当未払い、有給休暇の不付与、いじめ、パワハラ

飲食関係の職場で「売り上げがないのでお金がない。あるときに払う」と言って賃金を払わないケースは少なくない。特にインドレストランで顕著である。労働者は母国に仕送りしなくてはならないため、「払ってくれないなら辞める」と突然辞めてしまうこともある。その場合はそれまで働いた賃金ももらえないことになり、LUMに相談に来て解決することになる。

残業手当など手当分の未払いは職種を問わず多い。有給休暇についてはそういう制度があることすら知らされていない。日本人なら当然知っていることであるが外国人は知らない人も多いので、それをいいことに雇用主は制度自体を知らせないのである。

職場での日本人によるいじめ、パワハラは後を絶たない。中には「おれは外国人は嫌いだ」と広言する職場長もいる。労働者自身は職場に溶け込もうと努力しているのに「もっと日本語勉強しろ。何言っているのかわからないぞ」(事務系の職場)、昼食時持って行ったお弁当を見て「なんか気持ち悪いの食べるんだな」(工場労働者)、最近の転売ヤーを話題にして「中国人ってやだねー、考えることが汚いんだよ」と大声で言うなど、材料には事欠かない。職場にいるのが辛くなって、うつ状態になってしまった女性労働者もいた。

5.ビザ更新は外国人労働者にとって最大の問題─悪質な雇用主はこれを利用する

永住者は別として、それ以外の在留資格で滞在している労働者にとって、最大の問題(弱みとすらいえる)は、ビザの更新である。雇用主が協力してくれないと更新ができず、最悪の場合帰国しなくてはならない事態におちいってしまう。ビザの更新はビザが切れる3ヵ月前から申請できる。申請するにはいろいろな書類を出さなくてはならないが、中でも最も重要なのは現在働いている会社で今後も働くことができるかという点で、会社が「この人には今後も働いてもらいます」と証明する文書を出してくれなければ更新されない。

これを最大限利用した悪質な雇用主がいた。入管に申請書類を提出した後で、本人に「1ヵ月の賃金8万円」という契約書へのサインを迫ったのだ。この労働者のそれまでの賃金は月18万円、それを一気に10万円も下げる契約書であり当然拒否したいところだが、会社は「サインしなければ入管に出している書類を取り下げる。そうしたら日本にいられなくなる」と脅し、その労働者はサインをせざるを得なかった。最低賃金以下であり、残業手当も払われていなかったので労働審判を申立て解決したが、これまでに一番悪質な経営者だったと思う。

6.在留取り消し制度の不当性─ 3ヵ月以内に仕事を見つけないと帰国させる

2004年の入管法改定で、在留資格取り消し制度が新設され、2015年に更に改悪された。この制度は「在留資格に応じた活動を3ヵ月以上行わないで在留している(正当な理由がある場合を除く)」場合は、「在留資格を取り消すことができる」としている。正当な理由とはなにかが明確に示されていないので、労働者の中に不安が多い。「今の会社をやめたいけど、3ヵ月以内に次の仕事が見つかるかどうか不安だ。次の仕事を見つけてからやめたいが残業が多くなかなか見つけることができない」と相談にきた労働者がいた。LUMの役員はなぜ会社をやめたいかをよく聞き、いっしょに入管に行って職場の状況をまとめた文書を提出し、3ヵ月条項での取り消しを防いだ。この制度がなかった2004年以前は在留期間がある間は取り消されることはなく、雇用保険を活用しながらゆっくり次の働き先を探すことが出来たのである。また、雇用保険の自己都合退職の待機期間は3ヵ月であり、3ヵ月以内に仕事を見つけなくてはならないとなると雇用保険の活用が出来ないことになり、権利侵害もはなはだしく大問題である。